アスリートと貧血

先日はラジオ体操をしよう!の回でしたが、今回も引き続きスポーツの話題です。院長淺野です。

赤血球の中にヘモグロビン(Hb)が含まれています。ヘモグロビン(Hb)を構成する重要な成分が鉄(Fe)です。

図1
慶應義塾大学ホームページより

ヘモグロビン(Hb)は肺で取り込まれた酸素と結合して体中に酸素を運搬する重要な役割を担っています。ヘモグロビン(Hb)が不足してしまうと酸素が体に行きわたらなくなり息が苦しい等の症状が現れます。

ヘモグロビン(Hb)を作るのに重要な鉄(Fe)は体で作れませんので供給は食事からの摂取に依存しています。食事でとられた鉄(Fe)はヘモグロビン(Hb)を構成するのに使用され、余った分は貯蔵鉄(フェリチン)として肝臓等で保存されます。余った鉄のごく一部が鉄(Fe)として血液中に保存されます。

鉄(Fe)が様々な原因で不足すると貯蔵鉄(フェリチン)がまず使用され、次に血液中の鉄(Fe)が使用され、それでも鉄(Fe)が足りないといよいよヘモグロビン(Hb)が減少してきます。

ヘモグロビン(Hb)が正常より減少した状態が貧血です。我々一般人はヘモグロビン(Hb)減少した状態となって初めて酸素運搬に支障をきたすようになり様々な体調の不良が現れます。

めまいを起こしている人のイラスト
貧血でめまい

激しい運動をするアスリートはどうでしょうか。アスリートはヘモグロビン(Hb)の値が正常でも貯蔵鉄(Fe)が減り始めるとパフォーマンスに影響が出る場合があります。これを「アスリートの貧血」と表現する場合もあります。

呼吸苦等の症状を来すアスリートで貧血を疑った場合、血液検査でヘモグロビン(Hb)、鉄(Fe)、フェリチン(貯蔵鉄)等を測定します。

高い運動負荷がかかるアスリートでは、一般人の鉄欠乏性貧血の診断基準では不足と考えられるため、一般に基準値は高く設定されます。

ヘモグロビン値 男性:14~15以上 女性:13~14以上

フェリチン値  男性:40~50以上 女性:30~40以上

治療は鉄剤の服薬と食事療法でヘモグロビン濃度を少しずつ上げ、貯蔵鉄(フェリチン)量を回復していきます。貧血の状態にもよりますがフェリチンの値が正常回復するまでは、ある程度の期間を要します。その間は、鉄を『壊さない』『失わない』ためにトレーニングの量や負荷を落とす必要があるとされます。特に走り込みに関しては時間や回数を減らすことが重要となります。

(鉄が不足する原因)

鉄の需要が増加

成長やトレーニングによって筋肉量が増加

運動量が増加

鉄の摂取不足、吸収低下

食事で十分な鉄分が摂取できていない

腸での鉄吸収低下(ピロリ菌感染やヘプシジンの影響、など)

鉄が失われる

月経(女性)

消化管からの出血や血尿など

溶血

足底部(足の裏)への繰り返す衝撃による赤血球が破壊される
⇒特に中長距離の陸上選手やサッカー・バレーボール・バスケットボール・剣道などの選手に多い

筋肉の強い収縮による血管内溶血

その他

エネルギー不足(中長距離ランナー、柔道やレスリングなど体重別競技で厳しい減量を行う選手など)

希釈性貧血

慢性疲労・ストレスによる骨髄機能低下

慢性炎症

我々はアスリートには程遠いですが、がん予防を願って地道にラジオ体操第一をしています。