吸入ステロイドと成長抑制
急に寒くなってきました。
皆様体調管理をしていきましょう。理事長淺野です。
気管支喘息発作でゼイゼイしている患者様が増えています。
吸入ステロイドで背が伸びないですが?
とのご質問を受ける機会がありました。
少し喘息治療の歴史に触れたいと思います。
かつては、β刺激薬(メプチン等)の吸入や内服、テオフィリン製剤の内服や静脈注射がよく使われていました。
喘息の適応を持つ抗ヒスタミン薬があったりもしました。
発生してしまった発作を治療する効果はありましたが、発作の回数を減らす(発作を起きなくする)という点では、どれもほとんど効果が見られませんでした。
入院する患者様も非常に多くいました。
吸入ステロイドが開発され発作が抑制されるようになり、入院する喘息患者様も激減しています。
吸入ステロイドが喘息の発作予防という観点で非常に有用であることは明らかです。
上記が前提ですが、身長の伸びと吸入ステロイドという視点で調べてみると。
パルミコートの発売元のアストラゼネカ社によると
投与開始から最長168週まで(約3年3か月)投与した児を含む調査で、成長抑制を示唆する臨床所見は認められなかったとしています。
乳幼児喘息患者に対するパルミコート吸入液の長期投与は安全かつ有効な喘息治療であることが示唆された、としています。
様々な論文を検討した結果もあります。
小児への吸入ステロイドの成長抑制についてシステマティックレビュー(様々な論文を集めて検討)を施行し, そのエビデンスを評価しています。
治療期間が1年の場合, 吸入ステロイドはプラセボ(効果のない偽の薬)と比較して成長速度において年0.48cmの成長抑制が認められています。
成人期までフォローした報告では, 1.2cmの有意な成長抑制がみられています。
ただ、これは喘息に罹患したお子さんに
吸入ステロイドを使用し発作を抑制し平穏な日常を送った場合と
吸入ステロイドを使用せず頻回の発作に暴露され不眠等にさらされた場合(身長の伸びが抑制される可能性がある)
の身長の伸びを比較した論文ではないため評価は難しくなります。
喘息に罹患し日常生活に差しさわりが出ているお子様には適切なタイミングで吸入ステロイドを導入し、症状が安定してくれば適切なタイミングで吸入ステロイドを終了していくのが肝要かと当院では考えています。
お困りの際はいつでもクリニックにご相談下さい。