RSウイルス感染症

当院からRSウイルスで入院された方が2名でました。RSウイルス感染症が流行し始めています。

黒字が本年です

RSウイルス感染症は、RSウイルスに感染することによって引き起こされる呼吸器の疾患です。RSウイルスは、2歳までにほとんどのお子さんが1度はかかるウイルスです。年齢を問わず、生涯にわたり顕性感染(症状の出る感染)を繰り返します。終生免疫(1度かかると2度とかからない)ではありません。RSウイルス感染症は乳幼児期においては重要な疾患であり、特に生後数週間~数カ月間の時期においては母体からの移行抗体が存在するにもかかわらず、下気道の炎症を中心とした重篤な症状を引き起こす場合があります。

潜伏期間は2~8日、典型的には4~6日とされます。発熱、鼻汁などの上気道炎症状が数日間続いた後、20~30%の初感染児において、下気道に影響が及ぶ場合があるとされます。特に細気管支炎となった例では、炎症性浮腫と分泌物、脱落上皮により細気管支が狭くなるに従って、呼気性喘鳴、多呼吸、陥没呼吸などを呈するようになります。

細気管支とは分岐に分岐を重ねた後の細い気管支です こそだてハックより

喀痰の貯留により無気肺を起こすことも珍しくありません。

無気肺になると肺が真っ白になります ナースのヒントより

RSウイルス感染症は、乳幼児の肺炎の原因の約50%、細気管支炎の50~90%を占めるとの報告もあります。

また、低出生体重児や、染色体異常、心肺系に基礎疾患があったりした場合重篤化します。重篤な合併症としては、細気管支炎・肺炎以外に、無呼吸、ADH分泌異常症候群、急性脳症等があります。

RSウイルスは「接触感染」と「飛沫感染」という感染経路で感染が広がっていくことが知られています。「接触感染」というのはウイルスが付着した手を介して広がり、「飛沫感染」は咳やくしゃみで飛散したウイルスを含む飛沫で感染が広がります。年長者の再感染例ではRSウイルス感染症と気付かれない軽症例も多数存在することから、家族間の感染や乳幼児の集団生活施設等での流行を効果的に抑制することは困難である場合が多いと考えられます。

下記の対策が有効とされます。

子ども本人、および周囲の人がしっかりと手洗いをすること(アルコールの速乾性手指消毒剤も有効です)

マスクの着用(咳、鼻水などの症状がある人。マスクができる年齢の子ども)

子どもたちが使用するおもちゃや、触れた場所などの消毒

人混みを避ける

特効薬などはなく、治療は基本的に対処療法(病気の症状をやわらげる)を行います。酸素投与、輸液、呼吸管理などが対処療法になります。

診断には迅速検査キットが用いられますが1歳未満が保険適応で、原則1歳以上には施行できません。

原始的ですが手洗い、うがいを励行していきましょう。