夜尿症とは
乳児期には誰もがおねしょをしてしまいますが、成長するにつれて減少し、寝ているときに漏らしてしまう事はなくなります。夜尿症は、幼児期を過ぎても夜間、睡眠中に無意識に排尿してしまう状態です。主な原因は、夜間尿量の増加と夜間膀胱容量の減少の二つです。すなわち、夜、寝ている間のおしっこの量が普通より多すぎるか、夜、寝ている間に膀胱に貯められるおしっこの量が普通より少なすぎるか、あるいはその両方ということです。
したがって、治療としては夜間尿量を減らすこと、および夜間膀胱容量を増やすこと、ということになります。前者には、抗利尿ホルモンが有効であり、後者には、夜尿アラームや抗コリン剤が有効です。寝ているときのおもらしは、段々と治まっていくことが多いのですが、医療機関で継続的な治療を行うことにより、頻度を減らしたり、治療を受けない場合よりも早く夜尿が解消したりすることが期待できます。お子様に夜尿がみられたら、一度ご相談になるよう、お勧めいたします。
夜尿症治療の三原則
夜尿症のお子様に対し、不安を感じられる保護者の方も多いと思いますが、次の三原則を守っていただきたいと思います。すなわち、「焦らない」、「怒らない」、「起こさない」です。焦ったからと言って、それだけ早く治るというものでもありません。お子様を叱っても、効果は上がりません。むしろ、ストレスが高まり、夜尿症が治りにくくなりかねないのです。また、むやみに起こしますと、熟睡が妨げられるため、お子様の成長にとって好ましくありません。信頼できる医師と連携して治療を進めるようにしてください。
治療について
学校に上がった時点で治療を考えることが多くなっています。
最初は、規則正しい生活。過剰な水分摂取の制限。夕食後の飲水の禁止。入眠前のトイレ等を行います。また、動機付け療法(例えば、シールをおねしょしない日に貼る等)等を行います。それでも、夜尿症が継続するお子様には、積極的な治療をおすすめしています。
一般的には、夜尿症アラームまたはデスモプレシンをおすすめしています。夜尿症アラームとデスモプレシンは効果的で、深刻な副作用はほとんどないとされています。夜尿症アラームとデスモプレシンのどちらを選択するかは、家族の好みに大きく依存します。どれだけ早期の治癒が望まれているか、夜尿症の頻度と量を考えていきます。
アラーム療法(行動療法)
治癒までに時間がかかっても良い場合です。3か月程度使用して効果を見極めます。おねしょをするとセンサーが作動してアラーム音で本人を起します。次第に意識するようになり、睡眠中のおしっこを保つ力がつきます。続けて使用すると朝までおねしょをせずに眠れるようになります。アラームを鳴らさずに寝ようという意識が働くことによって、おねしょをしなくなるようにするトレーニングです。
デスモプレシン(飲み薬)
短期間の改善が優先されるお子様に行います。夜間尿量が多いお子様に行います。デスモプレシンを内服していただくことにより夜間の尿量が減少し、夜尿症が減ります。デスモプレシンはアラームよりも即効性があります。ただ、再発率は高いとされます。