あたまの形

小さいお子様の頭の形についてご質問を受ける機会が増えました。院長淺野です。

ヘルメット療法 下野新聞社より

Baby bandコラムを改変

(頻度)

頭のゆがみの発生頻度については、様々なデータがあり診断基準によっても異なってきますが、2013年にカナダで行われた研究では、生後3ヶ月程度の新生児の場合には約47%の割合で頭がゆがんでいると報告があります。また日本でも、2022年に発表された論文の中で、生後3ヶ月で56.8%、6ヶ月でも43.2%の割合で頭の形がゆがんでいると報告されています。つまり、赤ちゃんの頭の形がゆがむことは、比較的頻繁に起こることだと言えます。

(原因)

赤ちゃんの頭の形がゆがむ原因は、骨の病気である頭蓋骨縫合早期癒合症による変形と、外からの外力による変形の2つが上げられますが、ほとんどの場合は外力による変形です。

外力が加わるタイミングとして大きく出生前後に分けることができますが、出生前の場合、お母さんのお腹の中で赤ちゃんが通常と異なる向きを向くことで骨盤から圧力を受けたり、双子などの多胎妊娠の場合には狭い空間で通常よりも圧力が加わりやすくなります。

また、鉗子分娩や吸引分娩の場合にも頭部に圧力が加わり、ゆがむ原因となり得ます。

これら産前〜出生時の影響はそれほど大きくなく、ほとんどの場合は出生後に同じ向きで寝ていることが原因だと言われています

「向き癖」と呼ばれ、同じ方向で寝てしまう赤ちゃんは多く存在します。特定の方向で長い時間寝ている場合には、頭蓋骨にかかる圧力が偏ってしまうため、頭のゆがみが発生します。左右どちらかを向いている場合には斜頭、真上を向いている場合には短頭(絶壁頭)になりやすいと考えられています。

(頭がゆがむことの問題点)

頭の形がゆがむことによって、どのような問題が起こる可能性があるでしょうか。

赤ちゃんの頭の形がゆがむことの問題は、主に見た目の問題だと言われており、脳の成長や精神発達には影響がないと言われています。海外では、頭のゆがみによる発達への影響を研究した報告は複数ありますが、いずれも明確な因果関係を示していません。ただし、重度の頭の形のゆがみは発達遅延等のリスクとなる可能性があるので、しっかりと頭の形を評価し、モニタリングしていく必要があると結論づけています。

重度のゆがみの場合には顔の骨の変形や耳の位置のズレおこるため、単なる見た目の問題だけでなく、嚙み合わせ、視力低下、眼鏡がかけにくい等の機能的な問題が起こることもありえます。

(予防)

頭の形のゆがみを予防するために、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。

ゆがみが軽度の場合には自然に良くなる場合もあります。

頭の形が変わる主な原因は外からの圧力ですので、頭に圧力が加わりづらくなるような以下の工夫をすることで、頭の形がゆがむことを予防することができます。

①定期的に体の向きを変える(体位変換)

ベッドやベビーカーで寝ている方向や、授乳の向き、抱っこの向き等、バランスよく体の方向を変えてあげることで、赤ちゃんの頭の圧力が均等に分散され、頭のゆがみを防ぐことができます。

②うつぶせで遊ばせる時間を取る(タミータイム)

うつぶせ寝は乳幼児突然死症候群のリスクであり必ず親御さんが目の前で赤ちゃんの状況を観察できるようにして行ってください。

うつぶせで遊ばせることによって、首や背中の筋肉を鍛えると同時に頭の圧力を軽減し、頭形変形の予防に役立ちます。最初は数分だけでも大丈夫なので、少しずつ時間を増やし、1日60分程度を目安に実施すると良いと思います。

枕の一部にくぼみがあるようなドーナツ枕についてもよく聞かれますが、ドーナツ枕で頭の形のゆがみを予防できるのかはよくわかっていません。

またアメリカのFDA(医薬品や医療機器の安全性・有効性を規制する政府機関)からは、窒息や突然死のリスクがあるため、赤ちゃんの頭の形のゆがみを予防・治療するドーナツ枕は使用しないでください、と通知がでています。

(最後に)

こうした予防はもちろん重要なのですが、あわせてゆがみの度合を知ることも大切です。重度のゆがみの場合、体位変換やタミータイムでは改善しないことが多く、長い間悩まれるご両親もいらっしゃいます。月齢3ヶ月をすぎてもゆがみが気になるようであれば、一度専門の医療機関を受診するのが良いと思います。ゆがみが中等度以上の場合には、自由診療となりますが、ヘルメット治療という選択肢もあります。